Layered Diffuse Surface (Interfaced Lambertian BRDF)
このページは レイトレ合宿5‽ アドベントカレンダー第9週目の記事です.
本ページでは,モンテカルロレイトレーシング法において, 上図のような鏡面反射する層を持った拡散反射基板の表面 (Interfaced Lambertian BRDF) をレンダリングする方法を説明します. Interfaced Lambertian BRDF の実装に必要な パラメータや数式,重点的サンプリングの方法を説明します.
記号について
本ページでは以下の記号は定義済として扱います.
記号 | 説明 |
---|---|
ωn | Macrosurfaceの単位法線ベクトル |
ωm | Microsurfaceの単位法線ベクトル,本ページではマイクロファセット法線と呼ぶ |
ωi | 入射方向の単位ベクトル |
ωo | 反射方向の単位ベクトル |
fr | BRDF |
ni | 入射側の媒体の屈折率 |
no | 透過側の媒体の屈折率 |
n | noni |
F | フレネル項 |
本モデルについて
Interfaced Lambertian BRDF は,下図のようにフレネル反射層と拡散反射基板から構成されます. このモデルは,フレネル反射層の境界での鏡面反射と 層内部の多重反射後の散乱を考慮しています. フレネル反射層と拡散反射基板はそれぞれ鏡面反射,拡散反射のMicrofacetモデルで表現され, 必要なパラメータもそれぞれのMicrofacetモデルのパラメータを組み合わせるだけの シンプルなモデルとなっています.
Interfaced Lambertian BRDF
Interfaced Lambertian BRDF の評価は, 入射光に対する鏡面反射 fs と, 多重反射後の散乱 fb に分けて行います.
fr(x,ωi,ωo)=fs(x,ωi,ωo)+fb(x,ωi,ωo)
入射光に対する鏡面反射 fs には, 鏡面のMicrofacetモデルを用います (Beckman,GGXなど) .
fs(x,ωi,ωo)=14(ωi⋅ωn)(ωo⋅ωn)F(ωi,ωm)G2(ωi,ωo,ωm)D(ωm)
多重反射後の散乱 fb は, 拡散反射面のMicrofacetモデルに, 入射光の内部への屈折 T(ωi,ωm) と 内部での多重反射 1πn2(1−riρ) と, 内部から外部へ散乱する時の屈折 T(ωo,ωm) を 考慮したものになります.
fb(x,ωi,ωo)=ρπn2(1−riρ)∫T(ωi,ωmb)T(ωi,ωmb)D(ωmb)G(ωi,ωo,ωmb)|ωi⋅ωmb||ωo⋅ωmb||ωi⋅ωn||ωo⋅ωn|dωmbri=1−1−ren2re=12−2n3(n2+2n−1)(n2+1)(n4−1)+(n−1)(3n+1)6(n+1)2+8n4(n4+1)(n2+1)(n4−1)2ln(n)+n2(n2−1)2(n2+1)3ln(n−1n+1)
この式には積分が含まれているため,モンテカルロ法を用いて Microfacet法線 ωmb をサンプリングして解きます.
fb(x,ωi,ωo)=ρπn2(1−riρ)T(ωi,ωmb)T(ωi,ωmb)D(ωmb)G(ωi,ωo,ωmb)|ωi⋅ωmb||ωo⋅ωmb||ωi⋅ωn||ωo⋅ωn|p(ωmb)
重点的サンプリング (Importance Sampling)
Interfaced Lambertian BRDF の重点的サンプリングは, フレネル反射層の反射分布,もしくは拡散反射基板の反射分布に従ってサンプリングを行います.
まず最初は,フレネル反射層,拡散反射基板どちらの反射分布に従ってサンプリングを行うかを決定します. ここでは,フレネル反射層,拡散反射基板それぞれの総反射率をもとに確率的に決定します.
Rs=reRb=(1−re)2ρn2(1−riρ)
Rs ,Rb はそれぞれフレネル反射層,拡散反射基板の総反射率です. u1∈[0,1) となる一様乱数を用いて, u1<Rs(Rs+Rb) となる場合は フレネル反射層の反射分布に従ったサンプリングを行い,そうでない場合は, 拡散反射基板の反射分布に従ったサンプリングを行います.
フレネル反射層の反射分布のpdf ps(ωo) や 反射方向のサンプリング方法は層のMicrofacetモデルに従う (Beckman,GGXなど). 反射方向のサンプリングの方法については,アドベントカレンダー第8回 や Rough Specular Surface (GGX BRDF) を参照してください.
拡散反射基板の反射分布のpdf pb(ωo) は,
pb(ωo)=(ωo⋅ωn)π
であり, pb(ωo) に従って反射方向をサンプリングします. 反射方向のサンプリング方法は Smooth Diffuse Surface (Lambert BRDF) を参照してください.
最終的な反射方向のpdf p(ωo) は,
p(ωo)=Rs(Rs+Rb)ps(ωo)+Rb(Rs+Rb)pb(ωo)
となります.
まとめ
パラメータ
名称 | 記号 | 値 |
---|---|---|
拡散反射基板の反射率 | ρ | 0≤ρ≤1 |
表面粗さ | roughness | 0<roughness≤1 |
レンダリング
名称 | 記号 | 値 |
---|---|---|
BRDF | fr(x,ωi,ωo) | fs(x,ωi,ωo)+fb(x,ωi,ωo) |
p(ωo) | Rs(Rs+Rb)ps(ωo)+Rb(Rs+Rb)pb(ωo) | |
反射レイのWeight | fr(x,ωi,ωo)(ωo⋅ωn)p(ωo) | fr(x,ωi,ωo)(ωo⋅ωn)p(ωo) (特にキャンセルできる項は無い) |
以上,Interfaced Lambertian BRDFについて簡単にまとめました.
参考文献
- Daniel Meneveaux: Rendering Rough Opaque Materials with Interfaced Lambertian Microfacets (2017)